全身に悪寒が走り本能が警鐘を鳴らした。
この声の主は危険だと、
得体の知れない恐怖に反応して体はガクガクと震えている。
そして10年前のあの日の光景がフラッシュバックする。
『嫌ぁあぁあぁぁ!!!』
母親の泣き叫ぶ声。
(やめろ)
『言いなさい…さもないと…』
『がぁっ…あっあぁ!!やめぇ…』
父親が苦しむ悲痛の呻き声。
((やめろ!))
腹と胸を刺され内蔵が飛び出している母親と首が180度回転している父親の死体。
(((やめろ!!!)))
少女が全裸になり敬介に詰め寄り腰をくねらせる…
怯えが消えて震えが止まった。
変わって現れたのは怒りと殺意だった。
敬介はボストンバックから包丁を取り出して立上がり辺りをキョロキョロと見渡す。
しかし誰もいない。
「何処だ!!!出て来いよ!!!お望み通り来てやったぞ!!!」
そう敬介が叫ぶとの呆れた様な少女の声が帰って来た。
『あらあら…そんなに怒っちゃダメよ?怒りで顔を歪めさせて折角の色男が台無しじゃない。』
少女の逆撫でするような言葉に敬介の怒りは更に増した。
「隠れてねぇで早く出て来いよ!!!ぶっ殺してやるよぉ!!!」
『もういるわよ?』
後ろからかわいこぶった声が聞こえて後ろを振り向くと少女がクスクスと笑いながら佇んでいた。
彼女が視界に入ったその時には包丁を構えて少女の元へと走り出していた。
「うらぁあぁわぁぁ!!!」
唸り声をあげながら敬介は彼女の腹に包丁を突き刺した。