ハナは闇へと誘う道を進む。木漏れ日のスポットライトを浴びながら。
少しずつ、少しずつ。ゆっくりと、ゆっくりと。
数分歩いただけで辺りは美しさなど微塵にも感じない薄暗い森に姿を変えた。
歩けど歩けど代わり映えのしない景色。木々の行列がただひたすらに並ぶ。
「どこまで……続いてるんだろう」
不安から自然とハナの口から言葉がこぼれた。
視線を道の奥へと向ける。深い、深い闇の向こうへと
?
今のは何だろう?
ハナは闇の向こうに何かが動くのを見た気がした。
−−何だろう?
ハナの不安がかすかに増す。心臓の鼓動が先程より少し早めのリズムを刻みだす。
その何かは少しずつこちらに近づいてくるようにも見える。
また少しリズムが上がる。
少しずつ。
少しずつ。
ハナの心が不安に侵食されていく。
心臓が張り裂けてしまいそうなくらいのリズム。
その何かはどんどん、どんどん近づいてくる。
リズムは上がりすぎて完全に狂ったようになってしまっている。ハナの心の全てが不安に支配された。
だがその不安はすぐに消えた。
人だった。
「貴方がハナさん?」
目の前に表れた中年の女性がそうハナに問い掛けてきた。