MURASAME

あいじ  2007-07-15投稿
閲覧数[508] 良い投票[0] 悪い投票[0]

ぬえ?

翌日、竜助はろくに睡眠もとらずに本部へ急いだ。ぬえの正体、可王との邂逅…とにかく色々なことが一度に起こった。彼の理解を超える程に…


「…可王が接触してきたか…」
村神が愛想のない顔で言った。竜助は静かに頷くと、昨夜の顛末を語り始めた。村神は目を瞑りしばらく黙って聞いていたが、竜助の話しが終わると目を開け、彼を見据えた。
「ぬえの正体は…歪み…か、分かった。本部の資料室を使え、あそこなら何か分かるやもしれん」
「わかりました。それと…一つ質問があるんですが…」
「なんだ?」
村神の鋭い視線が竜助に絡む。竜助はまるで威嚇されている気分になった。
「…可王京介とは何者なんですか?」
竜助の質問に村神は目を瞑りしばらく考えていたが、竜助の顔を見据えた。そして語り始めた。
「可王京介…奴はかつて、妖庁最強とまで謳われた程の剣士だった。お前の兄、武流様や蔵王丸様も奴のことを信頼し尊敬していた。それに…村雨幸司を妖庁に連れて来たのも奴だ…」
「だから…兄のことを…」
村神の顔が曇った。二人の間にしばらくの沈黙が流れた。
「…だが三年前、可王は突然行方をくらませた。結局、どこに行ったのかは弟子である村雨にもわからなかった」
竜助は押し黙り口を噤んだ。村神は後ろを向くと立ち尽くしている竜助に資料室に急ぐようにと促した。


竜助は手元にある資料を本棚へ戻すと、大きく溜め息をついた。かれこれ二時間ぐらい同じことを繰り返している。
(まいったな…全く検討がつかない…一体、ぬえの本体はどこに…)
竜助は違う資料を探しに、本棚を見上げた。すると一冊の古い資料が目に入った。それはかなり古ぼけていて、表紙の字が読めなかった。
「なんだこれ…」
竜助は表紙をめくり題名を確認した。
「これは…僕の先祖が書いたものか…!」
表紙の裏には「氷川勇斗」の名がしっかりと刻まれていた。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 あいじ 」さんの小説

もっと見る

ホラーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ