口元にのびた手から私は顔を遠ざけた。
「い‥いいよ、自分で食べるから。」
そういって新しいチョコレートを袋から取り出し、急いで口の中にほうり込んだ。正直私は心の中で『なんでこんなにフレンドリーなのよ』と思っていた。でも彼はそれに気付きはしない。
「ふふふふ」
笑い方も特徴がある。きっと私が照れたのだと思ったのだろう。私はそれを無視してお盆を持ったまま表へ出た。
「あら、口が動いてる?またお菓子食べたでしょー!」
ママが冗談で私を睨む。冗談だと解っていても私は気落ちしてしまった。お客にも従業員でさえもまだ慣れてない私は対応に困った。