「あの…深雪がなぜ…?」
何が現実で…何が幻想なのか自分自身分からなくなっていた。
「ドアノブにロープをかけて自ら命を絶ったわ。」
背中に悪寒が走り全身の震えが高まってきた。
「聞かせてください。なぜ…」
婦人は事の一部始終を語り始めた。
深雪は決して、お金には何不自由しない家庭に育ったが、父親を亡くし母親は世間から身を隠す生活を強いられ、愛情には恵まれずにいた。
限りなく与えられたお金を派手に使う事で寂しさをまぎらわせていたという…。
しかし、近寄る男は悉く金目当てで深雪に従う周りの人間全てが、自分を陥れようとするハイエナのように見えてしまっていた…。
心に空いた穴は次第に大きくなり、薬物に頼らなくては自我を保てなくなっていた……。
深雪の中に住む闇はますます勢いを増し自分を飲み込んでゆく…。
次第に食物を口に運ぶ事はなくなった。
時折、発作を起こしては入退院を繰り返し俳人へと落ちていたのだ。
婦人はどうする事も出来ず、死に急ぐ我が子を救う術すら見つからなかった。
薬物によって狂乱した深雪を強制入院させ毎週1日だけの退院を提案した。
その日を利用しお店に顔を出していたのだ。
そう―\r
大金を握りしめて通っていた水曜日だ。vor.14に続く