包丁は少女の腹に刺さった筈だった。
しかし殺意を秘めた包丁は少女の体をすり抜けて後ろの壁に突き刺さった。
(すり抜けただと!?一体こいつは…)
『私は霊だからそんな攻撃は無駄よ。』
「クソがぁ!!」
敬介は壁から包丁を引き抜いて闇雲に包丁を振り回したが結果は同じ。 空を掻くだけだった。
「てめぇ…なんなんだ…一体…」
息切れしながら少女に問うと彼女は再びうんざりした様な口調で答えた。
『だから言ってるでしょ。
私は霊体だって。 普通の人間は私に触れるどころか見る事すら出来ない…でもね…』
そう言うと少女は敬介の胸部に左腕を入れ込んだ。
「うぅっ!!」
まるで心臓が掴まれた様な気持ち悪い感覚がして敬介は顔を歪めた。
『普通の人間でも霊体を肉体から分離させれば私を見たり触れたり出来るのよ。』
ぶち
ぶちっぶちっぶち!!!
自分の体から何かが切れる様な音が聞こえた同時に胸部から自分の体が引っ張り出されるのを感じた。
「これで全員そろったわね…フフフ…楽しみね…真幸…」
薄れゆく意識の中、彼女の笑い声が敬介の頭中に木霊していた。