「あ、コーヒーだ」
目の前のドリンクホルダーを指して、さおりが言う。
「や〜、柄にもなく早起きしちゃったかんね。目覚ましにコンビニで買ったの。飲んで良いよ!」
運転しながらチラッとさおりを見る一樹。
(別に欲しかった訳じゃないんだけど…)
変な事言ったかも…と思いながらも、せっかくなので飲みかけのコーヒーを手に取る。
「いただきます…」
(ちょっと待て…?これって…)
そう思った直後、
「あ、間接キスだ」
隣で一樹が口に出して言った。
見る見るさおりの顔が赤くなるのを見て、爆笑する一樹。
「わっかりやすいね!」
口を押さえて俯くさおり。
一樹は笑うのを止め、車を止めた。
「さおりちゃん」
「はい?」
呼ばれて顔をあげるさおり。
「言うね…」
何の事かわかってしまって、せっかく冷めかけていた頬が又、熱くなる。
「さおりちゃんが好きです。付き合って下さい」
一樹がさおりの左手を取って握る。
予告はされてたけど、いざとなると又、違った緊張に襲われる。
さおりは小さな声で
「はい…」
と返事をした。
「よろしく、さおり」
(え、いきなり呼び捨て?)少し戸惑いながらも「こちらこそ」と答える。
「あと敬語も無しね」