ヴォー…ヴォーという息づかいがだんだん激しくなっていく。
どうやらまだ拓海は抵抗しているようだ。
井上と三上が牛をどけようと試みたが、牢屋の角に追いつめられた拓海を取り囲んだ三頭の巨体はビクともしない。
「くそっ!やめろ!」
拓海の声が、かすかに聞こえる。
「拓海!大丈夫か!?」
「限界…」
次の瞬間、ドサッと言う音と同時に、一斉に牛達が身を屈めた。拓海は力つきて床に崩れ落ちたようだ…
ピチャピチャと、体を舐め回す音が牢屋に響いた…
「やめろ……やめろ…」
拓海の力無い声も、もはや三上達には聞こえない…
「拓海君!大丈夫なの!?ねえ!?これなんなのよ!もう嫌よ!」
由香が、さっき自分達の縄を切ったナイフで、牛の尻を突き刺した…
が…反応はない。
由香はナイフを床にたたきつけ、耳を塞いでその場にうずくまった。
しばらくするとピチャピチャと言う音が止んだ。が、今度は、グチャグチャと言う、ハンバーグをこねるような音が牢屋に響いた。
「ヒャァァァァァァァァァァァァァァァ!」
それは、今まで聞いたこともない様な、おぞましい声だった。