目眩は起こらなかった。
「やった!元に戻った!良かった!良かった!」
「サトシ?何言ってんの?」
僕は何事もなく僕に話しかけるリュウイチを見て急に涙が溢れ出して来た。
「リュウイチィ…ごめん。許してくれ。リュウイチ。ホントに…ごめん…」
僕は今まで生きてきた中で一番と言っていいくらいに泣いていた。
「リュウイチ…良かった……」
「はぁ!?サトシお前何泣いてんだよ!マジなんなんだよお前大丈夫か!?」
「リュウイチー!」
向こう側から2人が僕たちの方へ向かってきた。
「おぅ!お前らもう帰んの?」
「うん、休講だったんだよ!」
「ウソつけよ!どうせサボったんだろ!」
「ははっ!まぁな!」
シンタロウとユウタだった。
「ってか、その人なんで泣いてんの?まさかお前!」
「んなわけねーだろ!俺にもワケわかんねんだよ!おぃサトシ!大丈夫か!?バス行っちまったじゃねーかよ!」
「あぁ…ごめんな、リュウイチ」
「だから何で泣いてんだよ!」
「あぁ、ごめん」
「ってか笑ってんじゃねーか!おぃ!ふざけんなよ!マジ焦ったよ〜!」
「ははっ、ごめんな、ごめんごめん」
僕はホッとしたのか、泣いてるのか笑ってるのかわからない顔になっていた。ハタから見れば物凄く気持ち悪い顔だっただろう。
「あっ、リュウイチお前この2人に明日ゲーム貸すんだろ!?忘れんなよ!」
「あっ、そうだよリュウイチ明日絶対忘れんなよ!」
「お、おぅ。…ってかお前、何でしってんの?」
−あ、やべっ…
「あ、あぁ、リュウイチ達がそう話してるの聞いたんだよ!ははっ」
「ふーん、まいいや。あっ、バス来たぞ!」
僕はバスで4人と他愛もない話しをしながら家に帰った。それは今まで僕が感じた事の無いようなとても幸せな時間だった。