目眩の中の世界 Last

 2007-07-16投稿
閲覧数[597] 良い投票[0] 悪い投票[0]

僕はバスで4人と他愛もない話しをしながら家に帰った。それは今まで僕が感じた事の無いようなとても幸せな時間だった。

「ただいま!」

「あっ、おかえり〜。」

いつもと同じだった。バスから降りて家まで5分の道のりも、その途中でいつも僕に吠えてくる犬も、そしていつも僕の「ただいま」の声に応えてくれる母さんの声も。前となんら変わりのないものだった。
でも僕はそれが嬉しかった。いつもと何も変わらない。それがなにより嬉しかった。


その晩僕は夢を見た。
その夢ではもう一人の僕がただ一言こう言った。


−もう俺は必要ないよな。


僕はこのもう一人の僕が消えて行くのがはっきりとわかった。その時僕は帰りのバスで4人で楽しく喋っていた時の気持ちに似た清々しい気持ちだった。

−ありがとう。

僕はそうもう一人の僕に言った。

この日から一度もあの目眩は起こっていない。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 J 」さんの小説

もっと見る

ホラーの新着小説

もっと見る

[PR]
良い成分のみ使用
死海100%の入浴剤


▲ページトップ