航宙機動部隊第三章・31

まっかつ  2007-07-17投稿
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『だが、それこそが罠だった―提携成立後、連中は待ってましたとばかり、いきなり一つに合体し、一般株主をターゲットに法外な額で買い占めを繰り返し、事実上の独占体制を築いてしまった…後で調べて分かったが、全て大元は単体の巨大資本だったんだ…そうだ、我々はハメられたんだよ』
パレオス中央通信社だけではなかった。
何重にも巧妙に仕組まれ入念に練り込まれた買収工作は、同星邦メディア産業を凡そ二日で刈りまくり、至る所で勝利の凱歌を挙げていたのだ。
最外縁随一の如才無さを誇り、金融面でも知識・技術の集積は相当に進んでいた筈のパレオス商人が、どうしてここまで一方的に食い荒らされたのだろうか?
しかも、多かれ少なかれ、社会や人心の裏事情に精通し、世故に長けているマスコミの猛者達が。
『で、ですが…そんな事して一体何になるのです!どう考えても採算は取れないじゃないですか!』
確かに利潤追求にしても、ここまで来れば強引を通り越して異常としか言い様がない。
『連中の目的はカネ儲けじゃないのだよバウセメロ君―何故ならその巨大資本は星間諸侯系の金融会社なのだから』
アンドレア=ティレ=ロッツイは胸ポケットからパネルカードを取り出し、自身の多機能表示眼鏡にデータ送信させて、改めて確認を取りながら、
『恐らく目的は【支配】だよ。君も長年この世界に身を置いているから分かるだろう?情報は力だ。我が社始め星一つのマスコミを買い占める位、連中なら朝飯前さ―ここまで来れば、やったのは誰だか良く分かるって物だな、今更言う必要も無いが』
『フーバー=エンジェルミ…』
薄い桃色のジョヴァンナの口紅が、今や全パレオス星民に取って最も忌み嫌うべき大量虐殺者の名を、微かに漏らした。
『これが彼の第二のテロだ。そう、金融テロだ。全く見事なやり口だよ―恐らくは怒り狂った星民が大暴動に訴えるまで見越していたんだろうな』
力無き立像と化してしまった自分の部下にに向けられて、アンドレア=ティレ=ロッツィの多機能表示眼鏡が無機質だが怪しいデジタル光を煌めかせた。
『それから経営を握られて、子会社化されて…ビジネスマンとして言ってはならないが、奴等は本当に下劣で卑怯なケダモノだよ』

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