「久しぶりだね」
「あぁ、久しぶり」
一年ぶりくらいに会った私達が最初に交わした言葉は、そんな素っ気ないモノだった。
「元気にしてたか? あ……髪、伸ばしてるんだな」
「うん。長い方が似合うって」
「…彼氏が?」
「…さぁ」
「そっか。…なんか、幸せそうだな」
「そう見える?」
「あぁ、見える」
「なら、そうなんだよ」
「あぁ、そうなんだろうな。昔は俺がロングが好きっつってもずっとショートだったし」
そう言って意地悪そうに笑う彼。懐かしい、あの頃のままの笑顔でいた彼に、少しの苛立ちを覚えた。
だから。
「髪を伸ばしたのはね、嫌がらせなの。私が貴方に出来る、唯一の」
昔はしていなかった、毛先をクルクルと指で弄びながら、私は笑顔で言った。
「想っても想っても届かないって事が、貴方といた時に分かったから」
「だから、こう思ったの」
私達の距離約1メートル。私はそっと距離を取る。
「貴方から泣いて謝る位の女になろうって」
今の私に出来る、最高の笑顔を残して。
くるりと彼に背を向けた。
「今日さ!」
彼の少し張った声が背中越しに聞こえる。
「今から、暇か?」
私はゆっくり振り向いた。
「ぎっしりよ」