リンゴ

リンゴ  2007-07-17投稿
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「久しぶりだね」


「あぁ、久しぶり」


 一年ぶりくらいに会った私達が最初に交わした言葉は、そんな素っ気ないモノだった。


「元気にしてたか? あ……髪、伸ばしてるんだな」


「うん。長い方が似合うって」


「…彼氏が?」


「…さぁ」


「そっか。…なんか、幸せそうだな」


「そう見える?」


「あぁ、見える」


「なら、そうなんだよ」


「あぁ、そうなんだろうな。昔は俺がロングが好きっつってもずっとショートだったし」


 そう言って意地悪そうに笑う彼。懐かしい、あの頃のままの笑顔でいた彼に、少しの苛立ちを覚えた。


 だから。


「髪を伸ばしたのはね、嫌がらせなの。私が貴方に出来る、唯一の」


 昔はしていなかった、毛先をクルクルと指で弄びながら、私は笑顔で言った。


「想っても想っても届かないって事が、貴方といた時に分かったから」


「だから、こう思ったの」


 私達の距離約1メートル。私はそっと距離を取る。


「貴方から泣いて謝る位の女になろうって」


 今の私に出来る、最高の笑顔を残して。


 くるりと彼に背を向けた。


「今日さ!」


 彼の少し張った声が背中越しに聞こえる。


「今から、暇か?」


 私はゆっくり振り向いた。


「ぎっしりよ」


 



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