ポケットを探ると携帯が入っていた。
赤い携帯。間違いなく自分の。
携帯に表示されている時間…
16時45分
状況を見る限り今は朝のはずだが、公園で異変が起きた時間のままだった。
誰かに連絡して、今の時間きいてみようか。
そう思い、嫌な予感がする。
…まさか、繋がらないなんてことは…
ガチャ
部屋の扉が開いた。
ひとまず携帯を側におく。
入ってきたのはさっきの女と、見知らぬ老婆だった。
「…んん…それで…なにが…どうしたんじゃ…?」
なにがって…なにが?
白髪まじりの髪。腰は大分曲がっている。
…ボケてるんだろうか。
おれはどう反応すればいいか解らず、固まってしまう。
「レンの様子が変なのよ。私の事が解らないの。だからおばあちゃん呼んで来たんじゃない」
「ああ…そうじゃな。ふむ、ふむ…どれどれ…」
女の説明で、老婆は納得したようだった(思い出した、ではない。納得)
絶対ここに来る前に、女から説明を受けているのに、覚えていないという予想をするが実に容易い…
老婆はゆっくりおれに近づき、しばしの間、おれの顔を見続けた。