「死なないで下さい」
やっと出た言葉はそれ。
少し、頭が冷静になってきた。
腕の中のミサキさんは何も言わずにそこにいてくれて。
二人の涙が、
静かに零れていた。
腕の中のミサキさんが少し動いた。
僕はミサキさんを見る。
目が合った。
「あたしは、死なないよ」
長い沈黙のあと、ミサキさんがぽつりと言った。
声は小さいけども、その瞳は強い意志を秘めていた。
「あたしはぜったいに、死なないから。死ぬわけないじゃない。・・・あんたに殺されたりもしないから」
僕はこの言葉を待っていたんだろうな。
死なない、って言ってほしかった。
僕に殺されない、って言ってほしかった。
涙がまた溢れた。
ミサキさんを強く抱きしめる。
「大好きです」
ミサキさんは死なない。
死なせない。
それに、
こんなに眩しい彼女を
薄汚い運命が殺せるわけないじゃないか。
「・・・あたしもよ」
視線が交差する。
そして、唇が重なった。
涙はいつのまにか止まっていた。