「昨日は、連れと飲みに行ってくるって行ってたよね、電話で」
「うん…」
「連れの彼女が、彼氏の連れに、わざわざハート付きのメール…送るかなぁ?」
ここまで来て、一樹は黙り込んだ。
さおりもそれ以上、何も言わない。
「さおり…こっち来て」
先に口を開いたのは一樹の方だった。
さおりは言われる通り一樹のいる、ベットへ向かう。
一樹は、はぁ…と息を漏らすと
「ゴメン!!」
と頭を下げた。
さおりは冷ややか目で、その姿を見ていた。
さおりの両腕を掴んで頭を下げていた一樹は、顔をあげ、両手を頬に移動させた。
「何か言って…」
縋るような目を向ける一樹。
だけど、さおりは目を逸らしたままだった。
「どうしたら、許してくれる?」
一樹の問い掛けに、やっと口を開く。
「…別れよう?」
「!?」
衝撃で手の力が抜けた一樹。
さおりはその隙に立ち上がり、荷物をまとめた。
一樹の部屋を出たさおりは一人、駅に向かう。
制服のポケットでは、携帯が鳴っていた。
あの後、何度も一樹は説得しようとしていたが、さおりは聞く耳を持たなかった。
彼氏に浮気されてたのに、不思議と涙は出ない。