時代は幕末。京の街が酷い雨にうたれてる日に一つの報せが舞い込んだ。
「紗枝さん!大変だ!辰之助さんが新撰組にー!!」
そう、同士であり、幼なじみの村上伸介と石井儀三郎が報せに来た。
『兄が斬られた。唯一の肉親である兄が…。』
私は頭の中が真っ白になった。
私の名前は椿紗枝。生まれは長州の18歳。兄と共に腐った幕府の世を変える為に活動をしている。このところ、新撰組の取り締まりが厳しくなっていた。だから―。みんながいつ死ぬかも知れない状況で戦っているこんな時代。
『覚悟は出来ているつもりだった。』
でも、涙が止まらない。幼い時に両親を亡くし、兄の役に立ちたくて、守られるばかりの女でいるのが嫌で、随分前に武士になることを誓ったはずなのに。
何とか呼吸を整え、心配そうな顔で私を見ている同士に聞いた。
「下手人は新撰組の誰なの?」
「副長の土方歳三らしい。」
『土方歳三―。』
何人もの同士が新撰組の手で殺されている。私もその名前は聞いたことがあった。仲間思いの兄のこと、街で土方を見かけ、同士の無念を晴らそうとでもしたのか…。
『兄上―。』
私は一つの決意をした。
『兄上の無念は必ず紗枝が晴らします。』