ヤス#101
娘の恭子も専門学校に行ってはいるが、何とも…趣味なら分かるんだがなぁ…」
「はい、お嬢さんが専門学校で絵を勉強されているのは、女将さんから聞きました」
「ヤス。お前、この店にずっといたらどうだ?見込みもあるから、そのうち店くらい持たせてやるぞ」
「あ、はい…ありがとうございます」
「まあ、まあ。今日はやっちゃんのお誕生日なんだから、そのへんのお話はまた…ね」
「わたし、やっちゃんが描いた絵を見たいわ」
「もう…恭子まで。ふふっ、私も見たいわ」
「じゃあ、持って来ます」
ヤスは居間を出ると、寮からスケッチブックとキャンバスを持って来た。
「こんなものですけど…」
まず、驚愕したのが恭子だった。
「こ、これ…やっちゃんが描いたの?凄いわ。信じられない…あ、ごめんなさい。信じられないと言ったのは、凄過ぎるから言ったまでよ」
「ホントね。まるで画家みたい…」
女将は自分が吐いた言葉に苦笑した。
「ほう…上手いものだな。まあ、しばらくはこのままと言うことかな」
人の良い家族だ。ヤスは、ご馳走のお礼を丁重に述べると寮に戻った。