ヤス#104
そろそろ退散しようと思った。
「やっちゃん。今日はお買い物?」
「あ、はい…いえ…ただ、ぶらっと」
「その袋は何?」
「あ…はい、田舎の泰子おばさんにと…」
「ふーん…プレゼント…なんだ」
「あ、はい…お礼をしていなかったものですから…」
「ふーん。で、もう帰るの?」
「はい。もう帰ろうかなと思っていました」
「じゃあ、一緒に帰りましょう」
「あーっ!恭子はいいなー!」
「そうだ、そうだ!ずるいぞ!」
「ふふっ。だって仕方ないじゃない」
悦子と香織は、散々、恭子を冷やかすと駅の方に去って行った。
ヤスは、ふと、大事な事を思いだした。画材屋にいきたかったのだ。恭子にその事を言うと、案内すると言ってヤスの手を引いて行った。やれやれと思う。なかなか気が強そうだ。
画材屋と言っても四階建てのビルになっている。
ヤスは何が何だか分からない。結局、恭子のアドバイスを受けながら、画材を買い込んで帰路についた。
天神と言う繁華街から西行きのバスに乗った。運良く席がすいていて、ヤスと恭子は並んで座った。
「恭子さん。今日はたすかりました。絵の具の事、全然知らなくて…」