「こんな街初めて見た…。中世ヨーロッパって感じかな」
科学力で言うと日本より劣るだろうか。
外国の古き良き街って感じがする。
「一応説明するわね。
ここはバルカニア王国南部のレスニア地方、ミレーネの街。
そして向こうの山の上に見えるあれが、この辺一帯を収めるアレク・ハウ・ロウィンの住む、レスニア城」
山の上をさしながら、説明してくれる。
女にビンタをもらったあとも、おれは散々説明したが理解は得られず、やむなく記憶をなくしたと嘘をついた。
すると納得したのか、街を案内してくれるという。
何か思い出すかもしれないから、と。
今の状況を知る為に、おれはその好意を受けることにした。
外は別世界だった。
ある程度覚悟はしていたが、こんなとこに来てたとは思わなかった。
「あんたは、ここに住んでるんだよな」
そう聞くと、女が一気に不機嫌になる。
「あんたはやめて。名前教えたでしょ。ハルよ」
そうだった。
それで名字を聞いたら『自分で思い出してね』と、そう言われていたんだった。
無理な話だが、その場で頷いてしまっている以上、なんとか頑張らないといけないだろう