街を眺めながらハルと歩く。
ハルは楽しそうに街を案内してくれていた。
記憶喪失だと言ってから、ハルの態度は目に見えて変わっていた。
「ここって良い街だな。活気もあるし」
「首都のカルトデスタほどじゃないけどね。良い街よ。
この街の良い所は、自分で思い出してくれると嬉しいけどね」
そう言っておれの目を見てにっこり笑う。
…ふと、その笑顔に違和感を感じたが、気のせいだろう。
「それでね、案内したい場所があるのよ」
「どこだ?」
「さっき説明した、あの城よ。レスニア城」
向こうの山の上には城が建っていた。
この距離からでも、結構ハッキリ見える。
相当な大きさだろう。
「いいけど、何かあるのか?あの城に」
「まあね」
そう言ってまた笑っていた。
…なんだろう。
ハルの笑顔になぜか違和感を感じる。
不思議な感じがした。
心の奥になにかつっかかてるような…
するとおれの表情をどう見たか、ハルは不安げな顔をしていた。
「他に行きたい場所があるなら…やめるけど」
「いや、いい。行こう」
きっと気のせいだろう。
そう決めて、城に向かうことにした