電車に乗り込んだ光太郎は、ホームに立つ女学生と目が合った。
星窪女学園の制服だ。ちえみが着てるのを何度も見て覚えている。
『ドアが閉まります』
アナウンスが聞こえた。
(え…泣いてる…?)
目を逸らした彼女を見て、まさかと思った。
黒いミディアムの髪に、奥二重気味の目…。
少し距離はあっても、視力の良い光太郎にはわかった。
(…さおりん!!)
そう思った時には、もうドアは閉まっていた。
握り拳をドアに押しつける。
光太郎の心臓はいつもより早く高鳴っていた。
(まさか…)
不自然に涙を流していた彼女。
さおり本人と決まった訳ではない。
だが、もし本人だったとしたならば、何故あんな顔をして涙までも流していたのか…?
確かめたいと思った。
彼女がまだ、あの駅にいるとは限らない。
それでも光太郎は自分の気持ちを抑えられず、隣の楽加賀駅で降りた。
光太郎は足早に向かいのホームへ回る。
(早く来てくれ!)
なかなか来ない電車を祈りながら待つ。
5分も経てばやって来たが、光太郎からすれば、もっと長く感じた。
やがて目的の場所へと到着する―。