「ゴメン…困る事言って」
光太郎は視線を落とす。
自分の気持ちをぶつけても、さおりの迷惑にしかならないとわかっていたからだ。
さおりが口を瞑って言った。
「私も、我慢すんの辞めるっ…」
「え?」
さおりの言葉に思わず聞き返した。
「私、彼氏と別れたの…」
目を丸くして驚く光太郎。
「彼氏といても、こうちゃんの事が忘れられなかった…」
ため込んでいた気持ちを吐き出すかの様に言う。
「ま、マジで…?」
光太郎は、信じられないと言った感じだ。
さおりが頷くと光太郎はたまらなくなって、さおりへ近づく。
「こんな寒いのに、何でマフラーなし?」
「ガッコに忘れちゃった…」
光太郎は自分がしていたマフラーをさおりに掛けると
思い切り抱き締めた。
(やべ…顔が…)
嬉しくて、変な顔をしてるんじゃないかと心配する光太郎。
「俺、さおりんの運命の人になれるかな…」
耳元で囁かれて、さおりはまた頷く。
「それに、もし運命の人じゃなかったとしても―\r
私はそう思ってるから」
「あ、雪…」
ふわり、舞散る雪。
初雪が降り、クリスマスソングが流れる中、二人は初めてのキスを交わした―。
END