ヨシノへ
今年も桜が咲き始めた。
校門の桜並木は相変わらず綺麗だ。
お前はこの桜を見ているのだろうか?
1月17日 20:11
「じゃーな。」
友達のタイキ、シュン、マキと図書館の前で別れを告げ、雪のぱらつく通り慣れた薄明かりの帰路、あいつらとテスト勉強を終えた俺はいつものように辿っていた。大学の図書館から写真屋を越えて、車が一台がやっと通れる幅の身長より少し高いコンクリートの壁に挟まれた道を5分くらい歩くと俺の住んでいるアパートに着く。部屋のドアの前に着いたら、かばんから鍵を取り出す。鍵に着いたシルバーのキーホルダー、初めて入ったバイト代で買ったチェーンの先にクロスが付いたもの。鍵を開けようとしたときに嫌にひんやりとした感覚が手に付いた。ドアを開けて玄関に踏み出そうとしたとき、
「うわっ!!」
思わず声をあげて後ろに転んでしまった。その理由は崩れた俺の腰に抱き着いているヨシノに体当たりをされたからだ。
「おかえり。」
腰に抱き着いたまま、嬉しそうな声をする。
「ただいま。分かったから離れろ。」
と頭をぽんぽんすると、しぶしぶ俺の腰に回していた手を話す。
ヨシノに着いて話すと1週間前のことになる。