【3回表】
打席には八神光輝がいた。
打席に立つと周りの音が静かに聞こえる。
まるで俺と相手投手が1対1で戦っている。
そんな感覚に襲われる。
初球。
外側!!やや外れてるか…
バン!!
主審『ストラーイク!!』
ギリギリベースの上を通っていた…
周りの歓声が耳に入らない中、曾我端さんの怒鳴り声だけが響いた。
『振らなきゃ当たんねぇんだよ!!結果出せねぇと使わねぇぞ!!』
これを聞いて俺はビビった…
初球から受け身の気持ちで臨んでいる俺に、曾我端さんは喝を入れたのだった。
そうだ!結果を出さないと次はない!
俺は気持ちを切り替えた。
2球目。
南が振りかぶったのが一瞬見え、その後また速いストレートが来た!!
真ん中やや内側?
頭をよぎった瞬間、俺はバットを振った。
カキッ…
ガシャーン!!
『ファール!』
ボールはバックネットに吸い込まれた。
これで2ナッシング。
三球連続真っ直ぐはないだろう……?
南、相良バッテリーは考える間も与えない。
また南が振りかぶったのが見えた。
俺はバットを強く握った。
ビュン!!
……真っ直ぐ!!
真ん中の低めだろうか…
打った感じは良かった。
カキーン!!
南がのけ反りながらグラブを出したが、そのグラブを弾き打球がセンター前に抜けるのがわかった。
また3塁側が沸く。
俺は一塁へ無我夢中で走り、遂に練習試合初打席、初安打を記録した。
緊張感が和らぐと一気に歓声が耳に入った。
タク『いいぞ!コウ!』
リュウヤ『即席左バッターいいねぇ〜♪』
3塁ベンチで腕組みをしながらニヤける曾我端さんの顔が見えた。
今井先生も笑顔だ♪
【無死1塁】
塁上で曾我端さんの出したサインを見ると『送りバント』だった。
トップに帰ってアキが打席に入る。
3回表、俺自身のヒットで南から点を奪うチャンスを作ったのだった。