【3回表、無死1塁】
1塁上には俺、打席にはアキがいた。
南がセットポジションに変わる。
俺はリードを少しとった。
チラっと南が俺を見たが、投球動作に入った。
それに合わせアキがバントの構えをする。
俺はリードを広げた。
カキン…
『アウト!!』
『アウト!!』
………一瞬だった。
アキのバントがポップフライになり、相良が捕球。
1塁から2塁まで半分位のリードをとっていた俺は戻れなかった…
相良が捕球したのが目に入った瞬間、俺はヘッドスライディングで一塁に戻ったが、広すぎたリードと相良の強肩であっけなくダブルプレイになってしまった…
さっきの歓声とは裏腹にベンチからは怒声が響く。
ケイタ『なにやってんだよ〜』
ユニフォームについた泥を払いながらベンチへ戻ると、案の定曾我端さんの怒鳴り声が待っていた。
『バカヤロウ!!転がってから走れ!!』
コウ『はい…』
と俺は小さく返事をすると曾我端さんから離れたベンチの端っこに座った。
アキも曾我端さんに怒られているようだった…
しばらく黙ったまま戦況を見守ると2番のユウ君がセカンドフライに打ち取られていた。
これで3アウト。
グラブを持って守備に向かおうとすると、カズマが
『守備、切り替えていけよ』
と一言だけいって走り去っていった。
タクも
『ヒットだったし良かったんじゃね?切り替えて守れよ』
と、グラブで尻を叩いてきた。
この言葉に少し元気をもらい、俺はショートへ向かった。
ミスした分守りで取り返すしかない!!
いつもより大きな声を出して守りに入った。
【3回裏】
俺に来い!!
守りで貢献するんだ!!
と臨んだ守備だったが、エース天堂寺はそんな俺の気合いをいい意味で空回りさせた。
この回先頭の8番本多、続く9番遠藤を連続三振に取った。
あっという間に2アウトになった。
しかし、安心したのもつかの間、打席には朝山四天王、伊野波巧が2度目のバッターボックスに立っていた。