ヤス#106
「では、どうしたら良いですか?」
「ちゃんと添削してよ」
「はい。お嬢さん」
ヤスは恭子から鉛筆をかりると、サラサラと修正した。ものの十分で終わった。
「こんなものでしょうかね」
「………………」
「どうかしましたか?お嬢さん」
「私、自信無くしちゃうなぁ…」
「あ…添削してくれっていうから…」
「良いのよ。やっちゃんは悪くないんだから。私に才能がないだけよ。ありがとう!やっちゃん」
恭子は笑顔を残して奥へと消えた。
「ハハハ。ヤスのお陰で恭子は絵描きを諦めてくれそうだ」
「あちゃ…どうも、申し訳ありません」
「良いって事よ。ハッハッハ」
仕込みが早めに終わった。煙草を吸っていると女将から座敷に呼ばれた。
「女将さん。何か?」
「うん…今日ね。長崎の泰子から電話があったの」
「えっ!そうですか」
「喜んでいたわよ」
「はっ?」
「ふふっ。スカーフよ」
「あっ…お礼もしていなかったものですから…」
「それに、お手紙。泰子はそっちの方が嬉しかったみたい。やっちゃん、優しいわね」
「いえ…そんな」
「来週、福岡に来るそうよ」
「えっ?そうなんですか?ここに来るんですか?」