「いるわけねーじゃん。」
そう。本当に。
「じゃ、好きな子は??」
タイキが身を乗り出して俺に聞いた。
「いない。」
ていうか今は興味がない。
「ユーキちゃんは??」
マキが聞く。
ユキこと笠間悠紀は俺の高校のときの同級生で、今は県外の大学で心理学を学んでいる。異性ながら友人の中で1番気が合い、よくお互い相談したりされたりで、たぶん親友と呼べる数少ない存在だろう。マキがユーキの名前を出した理由は、冬休みに久々にユーキに会って、駅前のドトールでコーヒーを飲みながら話をしていたのをマキに見られたのがきっかけである。友人と説明したが、冗談半分で時々ユーキの名前を出す。
「ただの友達。」
「つまんねーの。」
背もたれに腕をひっかけタイキがぶすくれた顔で言う。
男子大学生で浮いた話がないというのもおかしなものだが、事実である。俺は昔から人に依存しても、恋愛になることがない。悩みといえば悩みである。
「あ、俺そろそろ行かなきゃ。」
そう言ってシュンがお盆を持って立ち上がった。
「彼女のとこ??」
「そ。」
マキの質問に惜し気もない笑顔を見せて答えた。
「あー、俺達も帰ろうぜ。」
タイキが勢いよく立ち上がり、食器を持って返却口にスタスタと言ってしまった。
「タイキってホントに行動わかりやすいわ。」
笑いながら言うマキ。俺もいつもの予想通りなタイキの行動に笑った。
1月10日 19:12
「じゃーな。」
と別れを告げ、シュンは学駐、マキとタイキはアパートのある南側、俺は北側へと歩きだした。
いつもの道をいつものように歩く。何気ない日常、何もない一日のはずだった。
アパートが見えたとこで、かばんから鍵を取り出し、玄関のある裏側へ回り込むといつもとは違う光景というか出来事が起こった。俺の部屋の前に女の子が座っていた。歳は15,6といったぐらいで、少し茶色い肩よりちょっと下の流さのストレートの髪、白いPコートに、ピンクのミニスカート。どことなく「お嬢様」といった感じの子だった。
座っている横には茶色いトランク。まるで、金持ちの令嬢が家出。そんな感じだった。
続く