風が心地良く頬を打ち、自分が自然と一体化する感覚を私は今、感じている。
深呼吸すれば、この世の生気全てを吸い込む事が出来そうだ。
しかし、私にはその必要はない。
何故なら私は今から死ぬのだから…。
長かった様で短かったこの2年間を思い出す。
ふいにはっきりとあの人の顔が浮かび、愛しさが込み上げ、私は泣きたいような微笑みたいような、変な気持ちになった。
目の前には海が広がる。私は今、ここから飛び下りる。
鳥になって、あの人に会いに行くのだ…。
最愛の人を亡くした今、この地に未練など無かった。あの人を無くしてからの2年間、本当に辛かった。
だからもう迷う必要など何もない。
私は躊躇う事なくその場から飛び降りた。
そのまま真っ直ぐ、下へ下へと落ちて行く…。
自然と笑みが溢れていた。
あの人もきっと喜んでくれているに違いない。
天国で、また一緒に過ごせるのだから…。