いつからか、通勤ラッシュ時の人混みがあまり気にならなくなった。あの部屋にいると、どうも気が滅入る気がする。特に試験期間中は。だから図書館へ行って勉強する。僕には机と椅子がないと駄目なのだ。といっても、普段は勉強しないから、そんなに必要な訳ではないのだけれど。
予想通り、大学の図書館の自習机は全て他の人達で占領されていた。仕方なく近くの喫茶店に向かう。
僕はこの3年間、一体何をしてきたのだろう。田舎から上京してきたばかりの頃は、生き生きしていたのだろうか。今では当時がよく思い出せない。バイト漬けの生活、友人なのかただの知り合いなのか、曖昧な人間関係。そして詰めの甘さ。後には必要な単位と漠然とした虚しさが残った。僕の部屋には無駄な物が沢山ある。充実した気になっていたのは、物が溢れていたからかもしれない。
アイス珈琲を飲みながら、久々にシャーペンを握る。ふと、高校時代仲の良かった奴の事を思い出した。彼はジュースを飲む時、グラスを決して持たない代わりに顔を近づけてストローで飲む奴だった。
結局、勉強はちっとも進まずに喫茶店をあとにした。あと数ヶ月耐えて、あの薄暗い部屋ともおさらばしてやるのだ。