気がつくと、アタシは自分を見下ろしていた。
え?何で何で?どうなってんのこれ?
やがて落ち着きを取り戻したアタシは、自分が車にはねられた瞬間を思い出した。
――そっかあ、アタシ死んじゃったんだよね
普段からノンビリ屋で、恋人の令からも呆れられているアタシにふさわしく、人生最期の時まで間が抜けている。
「…さん、池田詩織さん」
「あ、はい、何でしょ?」
後ろから名前を呼ばれて振り返りながら、なんだか病院の受け付けみたい、などと考えていた。
振り向いて声の主を見てみると、長い黒マントにフードですっぽりと頭を覆ったさえないオジサンが立っていた。
左腕に長い柄のついた鎌をかいこみ、右手に黒皮の表紙の分厚い本を持っている。
「もしかして死神さん?」
いかにもそのまんまな格好のオジサンにアタシはいつものようにボケをかましていた。
「ええ、まぁこちらの世界の住人さん達はそうおっしゃいますがね。 私は神がつく様な大それた者じゃありませんよ。 そろそろ本題に入らせて貰っても宜しゅうございますかね、お嬢さん」