君は今日もベットの中で僕の話に微笑んでくれた皆さん。この椅子で君と話をするのが僕の日課になっていた。医者に聞かなくても長くないことがわかるくらいに君は弱っていた。それでも君は僕をいつも笑顔で迎えてくれる。ほとんど話さなくなった君が一度だけ桜が見たいと言ったことがあった。僕は春になったら一緒に行こうと祈るような気持ちで約束した。
いつものように病院へと向かう。今日はいつもより急いでいた。桜が近所の公園で狂い咲きをしている噂を学校で聞いて、君に話したくてウズウズしていた。僕は病院の階段を急いで上がると、君が待っている病室に飛び込んだ。
君はいつものように微笑んで迎えてはくれなかった。天井を見上げたまま咳を一度しただけだった。僕は息と心を整えながらいつもの椅子ではなく、君のベットの端に座った。