ヤス#114
「何か…準備とか…しなくても良いの?」
「何を?」
「うん…戦う準備とか…無いの?」
「何が起きるか…何がやって来るのかもわからないんだ…でも、その時が来ればわかるさ」
「意外と呑気なのね」
「そう見える?」
「うん」
「覚悟は出来てる」
「覚悟?」
「うん…命を懸けて戦う覚悟さ」
「私もよ…あの日…やっちゃんに全てを預けたわ。私も覚悟は出来ています」
泰子は背筋を伸ばしてヤスを見上げた。
「やっちゃん。今夜は一緒に居られる?」
「寮暮らしだからね…」「弘子さんには話しをつけてあるわ」
「手まわしの良い母君ですな」
「ふふっ。じゃあ、いいのね」
「嫌と言うとでも?」
「まっ。やっちゃん、やっぱり随分と大人になったみたい」
大将が奥から笑顔でやって来た。泰子は立ち上がってお辞儀をした。
「やあ、久しぶりだねー!泰子さん。ああ、座って、座って」
「どうも、大将。ご無沙汰ばかりで…」
「いやー。弘子から聞いているかもしれないけど、ヤスの活躍ぶりは大したものですよ。良くぞ紹介してくれたと言う感じですな。ありがとうございます」
泰子は鼻が高かった。ヤスを信じてはいたが、弘子から何かある度に連絡をもらっていた。