「ええ、どうぞ。 ところでオジサンの名前はなんて呼べばいいの?」
再び問い返すアタシにオジサンはちょっと困った様な顔になる。
「詩織さん、ここで私の名を尋ねてきたのはあなたのひいひいお婆さん以来ですよ。 血筋ってヤツですか…… まぁいいですけどね。 私はクロガネと呼んで下されば結構です」
―― うちの家系ってやっぱアタシみたいな感じなんだなあ
思いがけず身内の話を聞けて、色んな人たちとのお別れを辛く思う気持ちが少し薄らぐようだった。
「池田詩織・1995年9月25日没・享年22歳……あれ?こりゃいかん!」
クロガネと名乗る死神さんは、とあるページを睨みながら難しい顔をしていた。
――1995年?まだ5年も先 じゃない?
「ちょっとクロガネさん、今は1990年じゃないの!アタシまだ17歳だよ?」
さすがにのんきなアタシもつい声を荒げていた。
問い詰められて額に脂汗を浮かべたクロガネさんは、少し言葉に詰まった後答えてくれた。
「ちょ、ちょっと待って下さい! 今事務局と連絡を取りますから。 大して時間はかかりませんよ」
そう言ってクロガネさんは懐から煙草の箱くらいの大きさの物を取出して何やらボタンを押した後、小さなテレビ画面に映る相手と聞いた事もない単語を並べてかなり熱の入ったやりとりを始めた。