(そうあれは・・・四年前。私のすべては、一瞬にして消えた。色鮮やかな世界が、一瞬にして真っ白になった。)
四年前の夏、夜。梨湖はコンビニでのアルバイト中だった。いつもと同じ、終わったら、彼氏、陽と会う。そう思っていた。
プルルルル、プルルル・・・カチャ。
「ありがとうございます、○○店です。どのようなご用件でしょうか。」
店長が電話を取り、何か会話をしている。梨湖は、その様子を気にしながら仕事を続けていた。それから、店長は、梨湖にこういった。
「岸部さん、多分君への連絡だから、電話に出なさい。」
「えっ?は、はい・・・。」
アルバイト中の電話は、初めてのことだった。どうしようもない不安感が、梨湖の胸をよぎった。
「梨湖ちゃん、落ち着いて聞いてほしいんだけど・・・」
電話の相手は咲麻だった。落ち着いて聞いてくれという、彼の声はとても震えていた。
「陽が、陽が大怪我して手術しているんだ。病院にきてくれないかな?」
何がおきたのかわからない。もう、梨湖には咲麻の声は届いていなかった。いつもと同じ、終わったら会うはずだった。どうして、どうしてこんなことになったのか・・・、梨湖は咲麻の言葉を受け入れられなかった。言葉が出ない。
梨湖の状態を察したのか、咲麻はこういった。
「梨湖ちゃん!とりあえず来て、待ってる。話はそれからだ。」
カチャ。電話が切れるとともに、実感させられた、いきなりの非現実。梨湖は店長と話をつけ、病院へと向かった。