――あ、あれ欲しいなぁ
と思いながら眺めていると、会話を終えたクロガネさんは少しホッとした表情になっていた。
「それってテレビ電話でしょ? アタシも欲しい〜っ」
「あのね、詩織さん、自分の置かれてる状況ってものを…… まァ構いませんが、本題に移りますよ。
…… 何だかあなたと話していると、こっちのペースが乱れちゃいますねェ」
ウホン、とひとつ咳払いをした後クロガネさんはアタシにこう告げた。
「こちらの手違いがあった事は幾重にもお詫びしますが、魂を戻すべき肉体の損傷が激しいため後15年待って頂かなくてはなりません。 なに、天国では15日間なんですけどね」
クロガネさんの説明にアタシはつい不満の声をあげていた。
「え〜っ、半月の間何やって待てばいいの?信じられなーい」
アタシの抗議をとうに予測していた様にクロガネさんは笑顔で教えてくれた。
「天国はですね、年中春のポカポカ陽気で遊ぶ所いっぱいですよ。 ゲーセンも新設してるしプールや遊園地使い放大、それにあなたのお好きなショパンの生演奏まで聴けちゃうんです!」
「え!本当? じゃあ早速案内のほうをお願いしちゃおっかなー」
現金なアタシの態度を見たクロガネさんは(こんな所までひいひい婆さんにそっくりとはね……)とブツブツ独り言を言っていた。