※佳奈美視点です。
人間じゃない。
その言葉を聞いて私の心の中の鎖が全て外れてしまった。
そうだ…
私は人間じゃない…
化け物なんだ…
ためらいはなかった。
そしてあの女の意思では無く自らの意思で死体の首筋に噛み付いた。
本部でも血は飲んでいたが直で飲むのはこれが2回目だ。
1回目はあの女の意思で殺して飲んだが、
今回は完全に自分の意思だ。
生で飲む血はコップで飲む血より甘く、血を吸う感触が堪らなく気持ち良く感じた。
「も…十分……だろう……」
後ろから勇の声が聞こえて来る。
その声を聞いた瞬間勇の不思議な心地良い香りがして自分の心臓が高鳴るのを感じた。
あの夜…
私を優しく抱き締めてくれた勇…
何故だか分からない。
理由など無い。
何故か私は彼に惹かれていた。
顔が良いとかそうゆう次元ではない。
何故だか分からない。
彼の香りを
体を
血を
そして彼の心を
全て私が独り占めしたくなった。
側にいたかった。
だけど同時に私は彼が恐かった。
あの殺意を秘めた真っ赤な眼。
私は彼を求めていたと同時に拒絶していた。
でも今は
私は彼と同じ化け物…
そう…勇と同じ…
私は死体から口を放して顔を上げた。
勇は怒っていたが目は優しい茶色だった。
あの時と同じ…
もう…我慢出来ない…
私は立上がり彼に抱き付いた。
勇の心臓はバクバク鳴って、慌てふためいている。
私は背伸びして勇の首筋に噛み付いた。
これが…勇の血…
そう考えるだけで体がゾクゾクした。
彼の暖かく甘い血が喉を通り心と体が満たされて行く…
貴方は私のモノ…
絶対に放さない…
そう思った矢先の事だった。
頭の後ろに何かが刺し込まれる感触と鋭い痛みが走った。
そして私は体がふらついて視界が真っ暗になった。