昼休みの美術室にいつもいるアイツ。
気付いたら目で追ってた。
だけど自分の気持ちに気付きたくなくて、知らないフリしてた。
面倒だと思ったから。
井上尊(みこと)とは同じクラスで周りと余りつるまないタイプの人間だ。
喘息持ちとかでよく学校を休んでる。
私、加島七海は対照的でわりと活発なタイプ。友達は結構いる方。だけど広く浅くと言った所だ。
「七海〜!キャッチボールしよーよ」
昼休み、いつもの様にサヤが誘いに来た。
「よっしゃ!行きますか」
腕まくりなんかしちゃって、校舎を後にする。
私達は校庭に出るとさっそくキャッチボールを始めた。
始めは普通に投げていたのがつまらなくなって来て
「いっくぞ〜!」
目一杯投げて見せる。
ボールは勢いよく、サヤの元へ…
と言いたい所が、手元が狂って校舎の窓ガラスに打ちあたった。
ガッシャーン!
「うぁっ!マジィ〜!?」
「やばくない?」
「ちょっと見てくるわ」
私はサヤを残して割れた窓の様子を見に行った。
そこは美術室で、中では人が屈み込んでいた。
「ごめんなさい!大丈夫ですか!?」
私は焦って近づいて行く。顔をあげたその相手が井上尊、その人だった。