やっと、テレビの電波が傍受出来た。小型テレビにはニュースが映っていた。
事件事故等一つもなく、人々の楽しそうな様子ばかりが報じられている。
様々な番組を見ていて気が付いたのだが、この時代に老人の姿はなく、みんな若く健康的だ。貧しい人もいない様子だ。
すると、ついに人類は不老不死の薬を発明したのか。
ここは西暦3500年の地球。俺は数時間前にタイムマシーンで、2007年の時代からやってきたばかりだ。
静かに森の中に着陸し、野外の探険に出かけることにした。その前に、テレビで外の世界の様子をのぞき見たのだ。
うまくすれば、俺も不老不死の薬を手に入れ、元の時代に戻り、素晴らしい生活が出来るぞ、と思いながら、ドアを開け外に出た。
…その直後に、十数人の警察に囲まれ、銃口を顔に向けられ、両手を頭の後ろで組まされたまま尋問を受けた。
彼らの話によると、約五十年前に世界的革命政府が出来て、人類を財政難に陥れている医療費問題と年金問題を、同時に解決するために、60才に達した人間は全員安楽死させる法律が出来たというのだ。
大変な時代に来たものだ。俺はあわてて事情を話し、過去に戻らせてくれと頼んだ。
いいだろう、すぐに帰るなら許可しよう、と言われた。
…俺はタイムマシーンに乗り込んだ。機内に緑色の小鳥が一羽紛れ込んでいたが、焦っていたので、そのままタイムマシーンを操縦し、一瞬で現在に帰還した。
…目が覚めた。ベッドの中だ。体が重い。夢か?
部屋の外で、鳥の鳴き声がする。ゆっくりとベッドから起き上がり、カーテンを開けベランダを見ると、緑色の小鳥がフェンスに止まっていた。
その鮮やかな色彩の鳥は、俺と目が合った瞬間に、虚空に飛び去り、あっという間に空の青に溶け込んだ。