航宙機動部隊第三章・41

まっかつ  2007-08-04投稿
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宣戦布告文は皇帝自身が書き上げるだろう。

御前会議が終わるとすぐに己の部署に戻った左総長クレオン=パーセフォンは、作戦の仕上げに取りかかった。
困難なのは飽くまで現実面なのだ。
理論的には完成しているし、実を言えば計算自体も地球時代末期のスーパーコンピューター程度のスペックで充分【裏が取れる】のだ。
それでもクレオンは、この作業の為に最高のスタッフを集めた。
数学・物理始めあらゆる分野のエキスパートを呼び寄せるべく、最外縁中に大金をばら蒔く事すら厭わなかった。
なぜならどれだけテクノロジーが進歩しても、細部の研磨や手直しに人手を必要とする事、この時代でも同様だったからだ。
否、テクノロジーが進歩すればする程、寧ろその重要性は増す一方だったと言って良い。
しかもいま手掛けているのは、どれか項目の中身がほんの一兆分の一ずれただけでも、何千何万もの人命の生死に及ぶ極度なデリケートさだったから、それに費やす頭脳・精神の消耗は正に死者が出かねない苛烈振りだったのだ。
自席に着いた左総長は、手にしたパネルカードから2Dホロ画像を展開して、運用予測データーに目を通し、チェックを入れる。
これで恐らく百万回目は越えただろう。
それでも安心出来ないのだ。
それ所か、不安が酷くなって来さえする。
だが、止めれない。
これでは強迫神経症だ。
実際、演算とシミュレーションを初めて以来、心を病んだスタッフは三桁に及び、実質三回は総入れ換えをしたも同然の惨状となっていた。
それ程のプレッシャーだったのだ。

帝国統合宇宙軍・大本営左総長として幕僚部を統轄しているクレオン=パーセフォンも又、大多数の帝国人の例に漏れずに征服された側の人間、つまりよそ者だった。
この年三六才、質の柔らかい明褐色の頭髪と眉目を持つ貴族的で繊細な顔立ちの美男で、それと良くマッチした金縁の眼鏡がトレードマークとなっていた。
表情も言葉も物腰も、軍人からは程遠い柔和さと温厚さに満ちていて、その点では君子然とした元ユニバーサルエリートのエタンと良い勝負だ。
統合宇宙軍四000万人の中で、最も文化的・常識的な人物であるのは間違いない。

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