ヤス#122

チャーリー  2007-08-06投稿
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ヤス#122
「ちょっと、事務所まで来いや」

不味い。事務所などあるかどうかは分からないが、路地裏に連れて行かれたらどうなるか分からない。一人ならどうにでもなるが、泰子がいる。泰子は恐怖で震えていた。

「おう!来いや」
「………………」
「どうした。びびっとんのか!」
「ほら、金ならくれてやるよ」

ヤスは財布を放り投げた。辺りに人だかりが出来始めている。

「このガキ。ふざけるなよ!」

男は威嚇しながらも、財布を取ろうとした。それが男の不幸だった。
ヤスの蹴りが顔面に入った。男は一蹴りで気絶してしまった。歯が飛んだようで、口から血を流している。長い舌が口から出ていた。ヤスは泰子の手を取って一歩下がった。

気絶した男の舌は、先が二股に分かれている。夏の水溜まりに湧く水草のような色をしていた。

「は、はい!やっちゃん」
ヤスは財布を取り上げると、震える泰子を抱えるようにして逃げ去った。
人ゴミからその様子を見ている男達がいた。明らかに筋者と分かる。中央に五十代半ばのかっぷくの良い男がいる。その男こそ、博竜会組長の竹内だった。倒れていた男が気を取り戻し、周囲の目を気にしながら赤い唾を飛ばしていた。

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