井上は光より早く(嘘)スタンドごと隠すと軽くこちらを睨んで来た。
「ゴメンって〜!」
思った通りの反応だ。
「ちなみにもう一つ謝るわ」
この際だから言ってしまおう。
「実は、昨日見ちゃったんだ☆アンタのソレ」
スケッチブックを指差すと、井上は手を止めてこっちを見た。
「や〜、アンタ滅茶苦茶上手いじゃん。隠すのもったいないよ」
笑って肩に触れようとすると井上が口を開いた。
「…んで、勝手に見てんだよ」
怒ってる。
「だって、そんな頑なに隠されるとさ…ぁ…」
「出てけよ!!」
(何か…嫌われてんのか?私)
私は美術室出て、一人ぼんやり。
(良い絵描くのにな…)
けほっ…けほっ…!
美術室から井上の咳払いが聞こえる。
ゴホッゴホゴホゴホ…!
「ちょっ!…大丈夫!?」
私はドアを開け放つと井上の側に駆け寄った。
どうしよう、苦しそうだ…。
「保健室行く?」
私の問い掛けに咳き込みながら首を振る井上。
「何強がってんのさ!」
目を見ない。
「そこまで怒る事ないじゃん!私はただ…」
私は…
「ただ、井上の絵が好きなだけだよっ」
井上がビックリした顔してこっちを見上げた。
けほっ…。