(あれ…咳止まっちゃった?)
井上はゆっくり立ち上がると振り返り、
「別に…怒ってる訳じゃねーよ…」
それだけ言うとまた、背中を向けた。
(なんだ…)
拍子抜けしてしまう。
(なんだ、なんだ〜、多分こいつ、ただの恥ずかしがり屋なだけなんだ…)
「ははっ!」
「何笑ってんだよ」
「や、別に、ククッ…」
井上が顔を赤くして睨んでる。
あ〜、あの井上君が…クール振ってる井上君が、実は恥ずかしがりだとは…。
(誰も知らないんだろうな〜♪)
そう思ったら何か嬉しくて、更に笑いが止まんなかった。
「出来上がったら見せてよ。また来るから♪」
そう言って廊下に出た。
ドアの隙間から「うるせーよ」って聞こたけど無視。
だって井上の完成した絵、見るの楽しみなんだもん。
それに…アイツのあの反応見んのも(笑)
「何スキップしてんのさ」
後ろからサヤに突っ込み入れられた。
「いや、天気が良いので♪」
「意味わからん〜!(笑)」
井上の事は誰にも秘密だ。
言っちゃうと面白くないし。
(しかし、あの性格だと完成しても教えてくんないか?そうだ、しょっちゅう顔出してやろう♪)
一人企む七海さんなのだった。