井上も、調子が良いのか最近は休まず来ていた。
私が来るようになって一週間くらいか、さすがに「暇人」と罵られたけど。
どーせ、暇だし(笑)
井上みたいに特別やりたい事がある訳じゃない。
当然、将来の夢もある訳がなく…。
一度聞いた事があった。
「井上はやっぱ画家になりたいの?」
答えはイエスだ。
「井上ならなれるね!絶対」
お世辞じゃない。
なれるよ、絶対。
「だから早く、それ見せてよ」
スケッチブックを指差すと、
「カンケーねぇだろ」
とか言われたっけね。
数日が経っていつものように美術室へ行った。
「寝てる…」
珍しい。
机に顔を斜めにして俯せてる。
若干見える井上の顔が、結構イケメンだと知った。
机の隅っこに小さなメモ書き。
「出来たぞ」
ってそれだけ。
丁寧に布を覆われたそれをめくる。
以前見た時は、色がなかったけど今は鮮やかで、だけど人を穏やかにするような背景。
そこに、井上の好きなモデルさんが立っている。
そんな絵だ。
(凄い…コイツもしかしたら天才!?)
肩を叩いて叫びたい気分だったけどさすがにそれはやめた。
疲れてるだろうから。
代わりにメモ書きした。