「さて、今は何時でしょうか〜?」
御神木に寄りかかると、その裏側から梨絵が言った。
「じゅ…11時27分…」
「待ち合わせの時間は何時でしょうか?」
「10時です…はい…」
「拓也って昔から時間にルーズよね?」
背中から聞こえる梨絵の声は…完全に機嫌を損ねていた。
「すっ…すみません?」
「あの時もそう…いつもアタシが待たされてばっかり。」
「あの時って?」
「拓也とアタシとの待ち合わせ全部?」
「すっ…すみませんでした」
「拓也も待ってみる?」
「いえ?けっこうです。本当にすみません?」
謝る事しか俺には出来なかった。
「それで?遅れてきた拓也さんのお話って何?」
そうだった。俺は梨絵に謝るために呼び出してたんじゃない。
気持ちを伝えるために呼んだんだ。