つかの間の休暇も他界の侵攻の報告とともに終わり、ウリューゼアは再び戦地へ赴く事になった。
「…また、行かなくてはならなくなったのね」
姉のエリシアは優しく包み込むようにウリューゼアを抱きしめた。
「また帰ってきます。私には優秀な部下が沢山いるのですから。それに、戦巫女がついてます。これで負けるようでは、この世界が負けてしまうでしょう?」
ウリューゼアはエリシアの手をそっと外しながら、笑って問いかけた。
「そう、ね。紅い女神と戦巫女の勝利をこの城から祈っていましょう。必ず、帰って来て、私の可愛い妹」
両の瞳に大粒の涙を浮かべて笑顔を向けると、祈るように手を合わせた。
「行ってきます」
ウリューゼアは紅い髪をたなびかせて城を後にした。
「ザキ、姉様から目を離すな。不逞の輩はすべて排除して構わない」
ウリューゼアは周りの者が聞こえない囁きで命じた。
「御意」
一陣の風がウリューゼアの頬を撫でた時に短い返事が返ってきた。
ウリューゼアは小さく頷き、微笑んだ。
「姫、今回の侵攻、何か気になります。くれぐれもご油断なされませぬよう」
紅い神殿の巫女、マキはウリューゼアに進言したのだった。