これは、私の母がまだ学生だった頃に体験した少し不思議な話しです。
昔から母は、大きなホテルで働くのが夢でした。サービスについて学ぶ学校に通い勉強に励んでいたそうです。
ある日、学校の授業の一貫で校外研修をする事になったそうです。
母と、母の友達Yさんの2人は少し有名なホテルに研修に行く事になりました。
そして、1ヶ月の研修が始まりました。
始めの2週間は何の問題もなく研修を行っていたそうです。
3週目のある日、母は先輩に頼まれて食器を運ぶ大きなワゴンを地下から取ってくる様に言われました。
道順はだいたい分かるので1人で取りに行く事になったそうです。
ワゴンのある部屋は、地下の廊下の途中にある冷蔵庫の前を通った次の角にあり、大きなワゴンを手慣れない手付きで押して、さっき通った廊下を戻っていきました。
すると、冷蔵庫の前に白いコックコートを着た人影が見えたそうです。
『さっき通った時は居なかった』
母はそう思ったらしいですが、特に気にとめずそのコックさんに挨拶をしたそうです。
小柄で髪は帽子に入れている為、男の子か女の子か分からなかった様ですが、その人はペコリと軽くお辞儀をしてくれたそうです。
母が通りすぎても、その人はずっとそこに立って動かなかったらしいです。
この日から、母の少し怖い研修が始まったそうです。