平将門?
闇が広がる。
暗い光が帝都を覆い造られた光がその輝きを失う。
今、外を出歩く者は誰もいない。民の全ては本能的に覚えていたのだ
平安の時代、深い暗闇のなか、人も妖も同じ屋根の下息を潜めて暮らしていたことを
帝都の狛犬、渋谷のハチ公像に地霊が群がる。ハチ公像は光を発つと地霊達を消し飛ばした。
しかし地霊は次々と群がり遂にハチ公を奈落へと引きずりこんだ。
同時刻…
同じ現象が上野でも起きていた。上野の西郷隆盛像も地霊が群がり、やがて奈落へと堕とされた。
竜助はバイクを走らせ、渋谷へ向かっていた。「嫌な予感がする」彼の思考はその言葉に支配されていた。
前方に暗闇が広がる。東京中のネオンがなくなっている。
前方から帝国軍人の一団が現れた。竜助は速度を上げるとバイク上で清姫を組み立て、その軍人達を斬り裂いた。
(こんな所まで…狛犬は無事か?)
竜助は渋谷駅へと走った。
渋谷駅は二目と見られぬ状態だった。軍人の地霊達が周辺を闊歩し、狛犬があった跡にぽっかりと穴が空き、そこからわらわらと地霊が溢れ出した。
「マズい…マズいぞ。これで帝都は丸裸だ!」
竜助に気付いた帝国軍人達は刃を抜き襲いかかった。彼は清姫を回転させ、振動の衝撃でバラバラに弾くが、軍人達の数は増していく。
「数が…違いすぎる…!」
竜助は瞬く間に軍人達に囲まれてしまった。煌めく凶刃が一斉に竜助を襲う。
しかし、その刃は彼に届かった。
「……?」
軍人達は空を見上げ立ち止まった。まるで歌声のような調子の呟きが聞こえる。その言葉が途切れると軍人達の体から炎が上がりその体を焼き尽くした。
「不動明王火界呪!」
その言葉と共に、薬師院大光明が姿を現した。
大手町の将門塚が大きく揺れる。墓石から血が流れ、辺りをさらに魔性暗黒色に染め上げる。
塚全体から悲鳴のような声が上がり、塚を吹き飛ばす程の衝撃が広がる。
大邪霊、平将門が復活しようとしていた。