梅城ケンヤは元々は典型的な腕白少年だった。
実家は商社マンの父と、インストラクターの母に、ペットの犬からなる。
これと言って問題はない。
それ所か、そこそこは裕福で満ち足りた家庭に育った、と言って良い。
だから両親はケンヤには塾に通って名門大学を目指す事を望んだ。
学校みたいな危険な場所に毎日通い、悪い事を覚えて欲しくないという親心をケンヤは蹴った。
なぜか?
彼には三才年上の従姉妹がいた。
名前はナツと言った。
ケンヤが産まれた時からの幼馴染みで、時として一人っ子の彼の姉代わりとなっていた。
その彼女は実は小学校高学年から激しいイジメにあっていた。
それも毎日だ。
教室・校庭・通学路・体育館、あらゆる所で彼女は持ち物を奪われ、隠され、落書きされ、身体中にはあざやタバコの火をつけまくられた。
クラス中からは無視され、何か悪いことがあれば、全ては彼女のせいにされ、謝っても許してもらえなかった。
家に帰ってもイジメは続いた。
何故なら学内ネットでは毎日自分の悪口・噂が流され、不特定多数に必ずなぶりものにされていたからだ。
そんなの見なければ良いじゃないかと思うが、しかし、イジメグループは巧妙だった。
毎日自分当ての書き込みに全部返事しろ。
さもなくば明日はもっと酷くやってやるからな!
イジメグループはそう脅しつけナツに逃げ道は無かったのだ。
今更ながらに、彼女は教師に相談した。
だが、帰ってくる答えはありきたりの経文だけだった。
―キミの側にも原因がある、それはキミが悪いんじゃないのか?
ほっとけばじき収まるさ、キミが軟弱だからつけこまれるんだ。
先生は忙しいんだ。
キミだけを見ている訳じゃない。
なんなら学校何か来なくて良いよ?
そんな面倒な事正直手に余る。
私だって万能じゃないんだ自分で何とかしろよ。
しばらく学校を休んでカウンセラーに見て貰えば?
今みんなそうしてるだろう?
イジメグループは普段は成績も素行も良く、教師の前では上手く立ち回るずる賢いのが多かった。
だから中々イジメはばれなかった。
当然ナツは両親に悩みを打ち明けるべきだった。
だが、イジメグループは先回りしていた。