平将門?
「何が起こっているのです!」
妖庁本部、竜助の声が部屋中に響いた。窓から見える景色は鬱蒼とした暗黒が広がっている。
「わからんか。狛犬は沈み、大邪霊が復活した…平将門がな…」
村神が沈んだ声で言った。竜助の顔が怒りで曇る。
「対策は…何か対策はないんですか!?」
竜助が怒りのこもった声で叫んだ。その言葉はほとんど悲鳴に近い。
「対策はない…あるのならばとっくに動いている…」
「しかし…!」
「落ち着け竜助。今お前が慌てても意味はない」
村神が竜助の顔を見据えた。重圧とは違う鈍い輝きが目に宿っていた。
「その通りさ」
部屋に凛とした声が響き渡る。二人は入り口を見つめた。そこには大光明と神経質そうな和服の男が立っていた。
「蔵王丸様…」
村神の言葉に蔵王丸が頷く。
「どうも。久しぶりだね」
にこやかに微笑む蔵王丸。その微笑みは見ている者を安堵させる物だった。
「蔵王丸様…何か策があるのですか…?」
蔵王丸が静かに頷いた。
帝都はこの世の地獄と化していた。地霊が溢れだし、亡者たちが闊歩する。不意に影から人が現れた。黒衣に身を包んだその姿は巨大な蜻蛉を連想させた。
「将門め…あくまで神を拒むつもりか…」
黒い蜻蛉…可王京介は忌々しそうに呟いた。可王の背後から闇のオーラが溢れる。そのオーラに気付いた亡者が一斉に襲いかかった。
「邪魔だ…」
可王は光のようなスピードで刀を抜くと迫りくる亡者共を一閃のもとに斬り伏せた。
「倒すは将門ただ一人…」
「将門を倒す?」
竜助が思わず声を上げる。部屋には蔵王丸を中心に大光明、そして村神が座っていた。
「そう、この闇は狛犬跡、そして大手町将門塚からでていることがわかった。後は大元を断てばいい」
蔵王丸は大光明を見やる。大光明は静かに頷いた。
「村神くん…出来るだけ多くの役人を集めてくれ…一気に攻め込む」