平将門?
妖庁の行動は素早かった。緊急召集された役人達は帝都の至る所に廻され、亡者達の鎮圧を図った。狛犬跡がある上野及び、渋谷の指揮は村神と蔵王丸が直接とり、大手町将門塚へは薬師院大光明、そして氷川竜助が向かった。
「大丈夫でしょうか…」
バイク上の竜助が心配そうな声で後ろに乗った大光明に話しかける。
「大丈夫も何もこんなもん賭けじゃ、成功する方がおかしいわい!」
「……何故、将門は蘇ったのでしょうか…」
「それは…」
大光明は詰まったように言葉を切った。「本人に聞くしかないのう」
二人を乗せたバイクは並み居る亡者達を突っ切り、将門塚へ走った。しかし、亡者達はバイクに群がり二人を襲った。
「っ…タイヤが…!」
コントロールを失ったバイクは鞠のように跳ね上がった。大光明は竜助を掴んで飛び上がった。亡者達は二人に気付かず、倒れたバイクに群がった。大光明は素早く印を組み、真言を唱えた。
「不動明王火焔呪!」
大光明の指先から炎が放たれ、バイクに群がる亡者達を直撃した。炎はガソリンに引火したのか凄まじい爆発が起こった。
「ぼ…僕のバイクが…」
「えぇい、お前の家は金持ちだろうが!新しく買え!」
竜助が情けない顔をする。亡者達は二人を取り囲み、じりじりと迫った。
「仕方ないのぉ…竜助!お主は将門塚を目指せ、ここは儂が食い止める」
そう言うが早いが大光明は亡者の群れへ関孫六を振り回し、飛び込んだ。竜助も清姫を組み立て大手町へ走った。
「風天神裂空波!」そう叫ぶ大光明の手から風が刃となり吹き荒れる。さらに片手をかざすと雷撃が放たれ亡者を打ちつけた。
「…きりがないのぅ…」
関孫六を持つ手が震える。その体はかつての力を惜しんでいた。
(せめて…元の体であれば…)
大光明は唇を噛み締めると関孫六を構え直した。踏み込もうとしたその時、前方から光の衝撃が襲いかかった。光は亡者を消し去った。
「羅殺剣…」
そこには可王京介が立っていた。